ロンゾ・ボールを取り巻く状況の難しさ
こんにちは。
今回は、多くのペリカンズファンに人気のあるロンゾ・ボールについて書いていこうと思います。
ロンゾはもともと持っていた高いディフェンス能力に加えてシューティングを大幅に改善し、今シーズンはポイントガードからシューターへと転向したことでよりフィットし、ペリカンズに欠かせない選手となりました。
今オフロンゾは制限付きFAになります。
FAなら再契約確定、と言いたいところなのですが、現地記者たちの中では残留派と放出派で意見が割れています。
なぜ意見が割れてしまうのか、割と複雑な理由があります。
その理由を、事実を元に考察してみたので1つずつ見ていきましょう。
1.契約延長を結ばなかった
まずはルールからですが、NBAでは選手を残留のさせる方法に再契約と契約延長があり、簡潔に言うと再契約は契約が切れてから(=FAになってから)もう一度契約すること、契約延長は契約が切れる前に(=FAになる前に)その契約を延長することを言います。
ルール上細かい違いは多くあるのですが、最も大きな違いは再契約はFAになるので全チームと交渉できるが、契約延長は所属チームとしか交渉ができないという点です。
つまり、FAになれば市場に出て競争が起こるので適正な価格というものが出てきますが、
契約延長だと所属チームとの1対1の交渉になるので合意のハードルは遥かに高いです。
ザイオンのようなマックス契約確定、といった選手であればマックスで契約延長を結んで終わりですが、
ロンゾぐらいの選手の場合は、チーム側は思ったより成長しないリスクなどを踏まえてこれくらいまでなら出せる、選手側はFAになったらもっと貰えるのでは、となりやすいということです。
またルールについてになってしまうのですが、通常の契約延長であればFAになる前日まで交渉することができますが、
ルーキースケール契約*1の延長は4年目のシーズンのモラトリアム*2明け〜レギュラーシーズンが始まる前日までの非常に限られた期間でしか契約延長を結ぶことができません。
つまり普通の選手より合意のハードルは更に高いといえるでしょう。
ロンゾは(ハートも)2020年に契約延長の資格がありましたが、合意に至りませんでした。
ペリカンズがどのぐらいのオファーを出したかという情報はありませんでしたが、少なくともロンゾ側が納得するようなリスクの高い金額は提示できなかったのではないでしょうか。
2.代理人リッチ・ポール
ロンゾは2020年9月14日に代理人をクラッチスポーツグループのリッチ・ポールに変更しました。
リッチポールはレブロンと契約していることで有名な代理人で、多くの有名選手のクライアントを抱えています。
ADがシーズン中に急にリッチポールと契約し、トレード要求をしてきたのは全ペリカンズファンのトラウマであることでしょう。
リッチポールだからといって必ず高額になるとは限りませんが、タフな交渉になるのは間違いないでしょう。
3.グッドプレイヤーではあるがグレートプレイヤーではない
ここが最も意見が割れる部分だと思います。
ロンゾは間違いなく良い選手に成長しましたが、ロールプレイヤーの域を出ず、ザイオンとイングラムがいる限りこれ以上の大きく伸びることはあまり期待できないということが現実的なところでしょう。
もちろんここからペリカンズでオールスタークラスの選手になる可能性もありますが、その低い可能性にいくら払えるかというコスト感は非常に重要になるでしょう。
ペリカンズは既にイングラムとマックス契約を結んでおり、ザイオンはマックス契約ほぼ確定となると、この2人でサラリーキャップの50%程度を占めることになります。
ロンゾがもし20M程度まで高騰すると、3人でチームサラリーの7割近くを占めることになります。
ペリカンズは今のロスターでプレーインにすら出場できていないという現状があるので、勝てないロスターで固めてしまうというリスクがあります。
キングスはフォックス、ヒールド、バーンズで固めてしまって勝てていないのに満足に補強できないという事態に直面しています。
ペリカンズもそうなってしまうリスクがあるということです。
成功例はブルズのラビーンですが、現状3〜4番手でこれからもそうなる可能性の高いロンゾがあそこまでの成長を遂げるとは考えにくいでしょう。
4.制限付きFAは高騰しやすい
ロンゾは今オフ、ペリカンズがQO*3を出すと制限付きFA*4にすることができます。
なので残留させようと思えば残留させることができるのですが、性質上金額が無制限FAより高騰しやすいです。
制限付きFAは仮に他チームがオファーを出して、そのオファーに選手がサインをし、48時間以内にペリカンズがマッチをすることで強制的に残留させられる、というものです。
もちろんロンゾがペリカンズのオファーが気に入って上記プロセスを経ず残留、ということもありますが、基本的には最も大きなオファーにサインをします。
問題はその48時間の開始のタイミングで、その48時間はモラトリアム明けから48時間なのです。
何が問題かというと、モラトリアム中にほとんどのFAが契約していく中でロンゾにオファーを出す金額分をずっと確保しておかなくてはなりません。
その上でマッチされてしまうとFAが全然いないのにキャップスペースだけが残されるという非常に不利な状況に追い込まれます。
つまり、オファーを出す側は絶対マッチされたくないわけです。
これが制限付きFAが高騰しやすい理由ですね。
最近はこれを嫌ってか、マッチされるリスクを負うぐらいなら対価を払ってサイン&トレード*5にしてしまおう、という動きがトレンドになっています。
オット・ポーターやハリソン・バーンズがマックス契約となったのもこれが原因です。
今オフはその時ほどリーグの総キャップスペースは多くはないですが、ロンゾが今の実力に対して大きなオファーが来る可能性は十分にあると思われます。
ハートに関しては、管理者は適正な価格に落ち着くと考えています。
ハートの場合ロンゾと違って完全にロールプレイヤータイプで、彼に高額のオファーを提示するのは危険すぎるでしょう。
なのであくまで難しいのはロンゾということですね。
5.トレードをしなかった
上記理由から、どうせ残すのが難しいならデッドラインにトレードして対価を得たほうが良い、という主張をしている記者もいました。
ただちょうどロンゾのパフォーマンスが上がっていっていた時期で、ザイオンやイングラムが残留を望むコメントを公に残していたこともありその決断は難しかったでしょう。
トレードしなかったことでより状況が難しくなったのは間違いありません。
6.NAWとヘイズの存在
NAWことニキール・アレクサンダー・ウォーカーは2年目で大きく成長し、ローテーションの座を完全に掴みました。
精度やプレー選択は改善の余地がありますが、ショットクリエイション能力は既にロンゾを上回っているといえるでしょう(完全に主観ですまん)。
そんなNAWの契約は2022-23シーズンまでです。
その時にロンゾの大きな契約が残っていた場合、お金のためだけにNAWを諦める、ということにもなりかねません。
同じドラフト年のヘイズもそのタイミングでFAになるので、そういった未来も加味して考える必要があるので難しいですね。
7.見返りなしで移籍させてもキャップスペースは使えない
なぜかというのを1から説明するととんでもないボリュームになってしまうので避けますが、
簡単に言えばロンゾ抜きでもサラリーはほぼ埋まっているのでいなくなったからといってその分のサラリーを使えるというわけではないということです。
なのでペリカンズとしてはそうなることはなんとしてでも避けたいはずですが、そうなる可能性はゼロではないというのが難しいところですね。
以上を踏まえた上で、ペリカンズの進む道を可能性順に並べると
①ロンゾと高値で再契約(あるいマッチ)を結ぶ
②サイン&トレードで放出しながら対価を得る
③見返りなしで移籍させる
④ロンゾと適正な価格で再契約(あるいはマッチ)を結ぶ
であり、理想はもちろん④ですが上記理由からそうなることは期待できないでしょう。
ちなみに管理者の言う高値は20M前後で、適正は15M前後です。
20Mと15Mではトレードのしやすさが全然違うので大きな違いだと思います。
この記事の内容は以前和訳したボビーマークスの記事にも関連するので、まだ読まれていない方はこちらも是非。
読まれた方もこの記事の内容を踏まえた上で読むとさらに分かりやすいかもしれません。
pelicanschampionship2.hatenablog.com
今回は以上です。
初めての考察記事だったので上手く書けているか微妙ですが、楽しかったのでまた何かあれば書くかもしれません。
お読みいただきありがとうございました。