ペリカンズは本当にカイル・ラウリーを狙っているのか?
引用元:
※この記事は件のトレードが報じられる少し前に書かれたものです。
ドラフトの日はもうすぐで、FAももうすぐだ。
7月29日が近づいて来るにつれ、インターネット上のあらゆる場所から噂が押し寄せて来る。
今回は、いくつかの主要なメディアが報じた2つの噂について書いていこうと思う。
1つはカイル・ラウリーをFAで獲得したいと思っているということ、
もう1つはそのためのキャップスペースを確保するために、10位指名権を使ってエリック・ブレッドソーをメンフィス・グリズリーズにトレードしサラリーダンプをしようとしているということだ。
これらの噂を事実と仮定し、深堀りしてみよう。
トレードの仕組み
前述したように、ペリカンズはドラフト前のこの期間中にカイル・ラウリーへの関心を公にしていた。
問題は、それを実現するキャップスペースがないことだ。
ペリカンズがFAになる選手(ロンゾ・ボール、ジョシュ・ハート、ジェームズ・ジョンソン、ビリー・エルナンゴメス、ジェームズ・ナナリー)全員のバード権*1をリナウンス*2したとしても、捻出できるキャップスペースの上限は13.586708Mだ。
カイル・ラウリーは高齢の選手ではあるが、ペリカンズに13.5Mで移籍することはありえない。
ここでグリズリーズの出番だ。
グリズリーズは、ジャスティス・ウィンズロウのチームオプションを破棄し、その他FAになる選手をリナウンスすれば、選手を放出することなくエリック・ブレッドソーの18.125Mの契約を吸収することができるキャップスペースを生み出せる。
ペリカンズはこの寛大な行為への見返りとして10位指名権を送り、代わりに17位指名権と小さなアセットを得ることとなるだろう。
ブレッドソーを完全に放出することで、ペリカンズのキャップスペースは10位から17位になることの減少分を考慮した上で33.031083Mになる(実際はアダムスとバランチュナスの差額分が加わり36.104254Mとなった)。
これはカイル・ラウリーと2〜3年の契約を結ぶのに十分な金額だが、問題はラウリーがどのぐらいの金額になるかだ。
ニューオリンズのようなマーケットはFAを獲得するために余分に支払わなければならず、コンテンダーでない場合はなおさらだ。
ラウリーは、シクサーズやヒートなどのコンテンダーを含む複数のチームに求められることとなりそうだ。
ペリカンズがラウリーと契約するにはいくらが必要なのか、作成したキャップスペースを考慮しても見通しはあまり良くない。
控えめに見積もり、初年度27Mで獲得できるとしよう(筆者は27Mで獲得できるとは思っていない)。
この場合、ペリカンズには約6Mのキャップスペースと、約4.9MのルームMLE*3が残される。
どちらもあまり大きな影響を与えるような契約は期待できないだろう。
トランザクションはどのように行われるか
私はペリカンズがカイル・ラウリーを獲得するというアイディアがとても好きだ。
だが私からすると噂されているトレードでは、ラウリー獲得のコストが大きすぎる。
10位指名権を失うことは、ロンゾ・ボールをただで失うことに比べたらまだ小さなことだ。
ペリカンズはトレードデッドラインでロンゾを動かさなかった。
これはロンゾを残留させるか、サイン&トレードで見返りを得るかということを見越していたからのはずだ。
キャップスペースでラウリーを獲得するとなると、ロンゾを見返りなしで失わなければならなくなるということを覚えておいてほしい(ロンゾのバード権をリナウンスする必要があるため)。
さらにフルMLE(約9.5Mの例外条項)は他チームのFAを加える主要な手段であるため、これを失ってしまうのも痛い。
昨年、サンズはフルMLEを使用しジェイ・クラウダーと契約することができた。
クリッパーズはサージ・イバカだ。
これらの損失は、35歳のラウリーにオーバーペイをするにはあまりにも多すぎるのではないか。
カイル・ラウリーを獲得する最善の方法は、ラプターズとサイン&トレードをすることだ。
例えば、ブレッドソーと将来の1巡目指名権をラプターズに送り、ラウリーを獲得するというトレードだ。
このルートだと、ペリカンズは10位指名権、ロンゾ・ボールのバード権、ジョシュ・ハートのバード権、フルMLEを失わずに済む。
ロンゾのサイン&トレードでラウリー獲得に費やしたアセットも回収できるかもしれない。
このような選択肢があるということは、グリズリーズとのトレードはラウリーをメインターゲットにしたものではないと考えられる。
ラウリーでなければ誰か
もしペリカンズがグリズリーズとのトレードでブレッドソーのサラリーダンプを行う場合、いくつかのことが起こる。
まず、前述したようにペリカンズはやろうと思えば最大で33Mのキャップスペースを生み出すことができる。
しかし、ペリカンズがロンゾの残留を希望したり、先にサイン&トレードしたりするとこの数字は小さくなる。
仮にロンゾと初年度18Mの契約を結んだ場合(つまり27Mのキャップホールドがなくなった場合)、FAに使えるサラリーは15〜16M(実際は18〜19M)程度となる。
このレンジで契約できる可能性のあるFAは以下の選手たちだ。
- エバン・フォーニエ
- ラウリ・マルカネン
- ケリー・ウーブレ
- ケリー・オリニク
- パティ・ミルズ
- ダグ・マクダーモット
またペリカンズはこのレンジに収まる選手を、選手の放出なしでトレードで獲得することができる。
ジョー・イングルス、マーカス・スマート、マリク・ビーズリーなどがそれに該当する。
このように、ペリカンズはラウリーの獲得に踏み切らないほうが多くの選択肢がある。
ロンゾがより低いサラリーで契約すればこの金額はさらに増える。
すると私のお気に入りのターゲットであるティム・ハーダウェイJrやダンカン・ロビンソンと契約できる可能性が出てくる。
だがペリカンズにはさらに大きな選択肢を与える方法がある。
ブレッドソーをグリズリーズにトレードするとして、その目的がキャップスペースを得ることではなくブレッドソーのサラリー分の額である18.1MのTE*4を生み出すとしたらどうだろうか。
この場合のメリットを考えてみよう。
- TEは獲得してから1年間有効。つまり、例えば2月にTEの金額に収まる選手を獲得したいと思った場合、それができるということだ。一言でいえば柔軟性だ。
- ロンゾのバード権、ハートのバード権、フルMLEを残すことができる。ロンゾと再契約を結ぼうが、サイン&トレードをしようがTEには影響はない。
- ペリカンズにはニコロ・メッリ放出の際に獲得した3.897436MのTEがあり、これを使用しグリズリーズの選手(グレイソン・アレンやブランドン・クラークなど)を受け取ってもブレッドソーで生まれるTEの金額が減ることはない。
- マイルズ・ターナー、ボグダン・ボグダノビッチ、テリー・ロジアー、ジョー・ハリス、OG・アヌノビーなどの選手を引き取ることができる。
トレードしたチーム側にはその選手分のTEと、見返りとして指名権などを得ることができるというメリットがある。 - 前述したハーダウェイJrなどのFAを獲得する際に、このTEを用いてサイン&トレードにさせることができるが、これを行うと元所属チームにそのサラリー分のTEが発生し、さらには指名権などの見返りも得られるので、元所属チームにとっては非常に良い選択肢の1つとなる。
まとめ
カイル・ラウリーのような選手の魅力は明らかで、数年はハイレベルなプレーができる可能性がある。
しかし、ラウリーを獲得するならグリズリーズを通るべきではない。
ペリカンズがグリズリーズと真剣に話し合ったのであれば、本当のターゲットは別にあると考えるのが自然だろう。
ドラフト順位を7つ下げてでもハーダウェイJrやダンカン・ロビンソンのようなシューターを獲得できるチャンスを作ることはペリカンズにとって価値のあるチャンスであり、飛びつくべきだ。
ペリカンズが柔軟性を犠牲にしてまでラウリーに固執しているとは思えない。
しかしデビッド・グリフィンは、昨年のアダムスのようにMLEやタックススペースの柔軟性を失ってまで特定の選手に固執したことがある。
全てがラウリーのためである可能性もないわけではないが、サイン&トレード以外でラウリーを追求するのは間違いであることを十分に分かりやすく説明できたと思う。
いかがでしたでしょうか。
少し難しい話でしたが、ラウリーをキャップスペースで獲得するとかなりコストがかかるという話でした。
管理者もラウリーのための動きと思っていましたが考えが変わりました。ロンゾ再契約も十分にありえますね。
お読みいただきありがとうございました。