グリズリーズとホーネッツとのトレードの内訳
こんにちは。
先日グリズリーズ、ホーネッツとトレードが行われましたね。
それぞれ別のタイミングで速報が出たのですが、最終的にはペリカンズ公式が3チームのトレードと発表しました。
また速報の時点ではホーネッツにウェス・アワンドゥを送るという内容はありませんでした。
Pelicans acquire Valančiūnas and Graham in a three-team trade with Grizzlies and Hornetshttps://t.co/1R9TLB7FfC
— New Orleans Pelicans (@PelicansNBA) 2021年8月7日
何故わざわざ3チームにする必要があったのか、何故ウェス・アワンドゥを追加する必要があったのか、それを解説していこうと思います。
◯トレードの全容
ペリカンズ獲得
- ヨナス・バランチュナス
- デボンテ・グラハム(サイン&トレード)
- トレイ・マーフィー3世の交渉権(2021年17位)
- ブランドン・ボストンの交渉権(2021年51位)
- (17.1Mのトレード例外)
ペリカンズ放出
- エリック・ブレッドソー
- スティーブン・アダムス
- ウェス・アワンドゥ
- ザイアー・ウィリアムズの交渉権(2021年10位)
- ジャレッド・バトラーの交渉権(2021年40位)
- 2022年1巡目指名権(自前、ロッタリープロテクト)
- 2022年1巡目指名権(レイカーズから)
- 現金
グリズリーズ獲得
- エリック・ブレッドソー
- スティーブン・アダムス
- ザイアー・ウィリアムズの交渉権(2021年10位)
- ジャレッド・バトラーの交渉権(2021年40位)
- 2022年1巡目指名権(レイカーズから)
グリズリーズ放出
- ヨナス・バランチュナス
- トレイ・マーフィーの交渉権(2021年17位)
- ブランドン・ボストンの交渉権(2021年51位)
- タイラー・ハービーの交渉権(2015年51位)
ホーネッツ獲得
- ウェス・アワンドゥ
- 2022年1巡目指名権(ペリカンズ、ロッタリープロテクト)
- タイラー・ハービーの交渉権(2015年51位)
ホーネッツ放出
- デボンテ・グラハム(サイン&トレード)
...とても多いですね。
ただ今回はトレードのサラリー合わせについてなので、交渉権や指名権、現金はスルーして契約下にある選手のみ考慮します。
他チームの獲得放出も一旦忘れましょう。
◯契約下にある選手とそのサラリー
※計算に支障はないので少数第二位以下を四捨五入しています
獲得
- ヨナス・バランチュナス(14M)
- デボンテ・グラハム(10.9M)
放出
- エリック・ブレッドソー(18.1M)
- スティーブン・アダムス(17.1M)
- ウェス・アワンドゥ(1.8M)
契約下にある選手のみにするとだいぶすっきりしました。
トレードを行う際には大体サラリーを合わせる必要があるということをご存知の方は多いと思いますが、具体的には以下の表のようになります。
ペリカンズはタックスラインを超過していないので、放出選手のサラリーによって受け取ることのできる金額が異なります。
では、このトレードが成立するか計算してみましょう。
放出額計:37M
獲得額計:24.9M
...そうです。減っています。
トレードではサラリーは増える方には上記のように制限はありますが、減る方に制限はありません。
つまりこれで成立、といきたいところですが、もう少し細かく見ていく必要があります。
選手が複数人絡むトレードの場合、処理の内訳を変えることができます。
例えば、
①ブレッドソー↔バランチュナス
②アダムス↔グラハム、アワンドゥ
のように分解することができます。
分解する場合もそれぞれがサラリー合わせのルールをクリアする必要があります。
この例だと両要素ともサラリーが減っているので問題ありませんね。
総額でサラリーが釣り合わないが、分解するとそれぞれでサラリーが釣り合うというケースも稀にあります。
しかし今回のトレードは、総額で釣り合っているにも関わらずペリカンズは処理の分解を行っています。
それはなぜか、を解説する前に触れておかなくてはならないものがあります。トレードの全容のところにも書いたトレード例外です。
トレード例外(以下TE)はいわゆる商品券のようなもので、その金額分までの選手をトレード・ウェイバーで獲得できるというものです。
例えば5MのTEがあれば、5Mまでの選手を獲得できます。
TEどうしやTEと選手のサラリーを合算することはできませんが、1つのTEで複数人の選手を獲得することは可能です。
TEは、トレードで単体で放出した選手のサラリーが受け取ったサラリーより多かった場合、その差額という形で手に入ります。
例えば、
20Mの選手↔15Mの選手
→5MのTEを作成
30Mの選手↔15Mの選手、10Mの選手
→5MのTEを作成
といった感じです。
放出選手が複数人だとTEを得ることはできません。
またTEはトレードの日から1年間有効です。
説明が長くなってしまいましたが、ペリカンズは今回のトレードで処理を分解することで17.1MのTEを獲得しました。
内訳は
①ブレッドソー(18.1M)、アワンドゥ(1.8M)↔バランチュナス(14M)、グラハム(10.9M)
②アダムス(17.1M)→”何もないところ”(0M)
となります。
①をそれぞれ合計すると18.1M+1.8M=19.9M↔14M+10.9=24.9M
表に当てはめると
19.9×1.25+0.1=24.975
最大24.975M受け取れることができるので、バランチュナスとグラハムをブレッドソーとアワンドゥだけで受け取るという処理を行うことができます。
そして残ったアダムスはというと、”何もないところ”に放出されます。
処理を分解した結果、アダムスの対価がなくなった形になったということですね。
対価がないので17.1Mが0Mと交換されたという扱いになり、アダムスのサラリー分がまるまるTEとなったのでした。
既にお気づきかもしれませんが、アワンドゥの1.8Mがなければこのような処理にするのは不可能なのです。
アワンドゥがいなかったとしたら、
①ブレッドソーをグラハムとトレードして7.2MのTEを作成
②アダムスとバランチュナスをトレードして3.1MのTE作成
という処理になっていたことでしょう。
このトレードにアワンドゥが含まれた理由は以上です。
ではなぜ3チームである必要があったのでしょうか。
別々にトレードを行っていたとしたらどのような処理になっていたかを見てみましょう。
◯グリズリーズとのトレード
①17.1Mのアダムスで14Mのバランチュナスを獲得し、3.1MのTEを作成。
②18.1Mのブレッドソーを何もないところにトレードし、18.1MのTEを作成。
...一見この方が大きなTEを作成できて良いように見えますが、問題は次です。
◯ホーネッツとのトレード
ホーネッツとはアワンドゥ↔グラハムの構図にしたいところですが、もう一度この表を見てみましょう。
アワンドゥのサラリーは1.8M、グラハムのサラリーは10.9M。
そうです。全然釣り合っていません。
ではどうするかというと、先程グリズリーズとのトレードで作成した18.1MのTEをグラハムの獲得に使わなくてはなりません。
①18.1MのTEでグラハムを獲得、TE残高7.2M
②アワンドゥを何もないところにトレード、1.8MのTEを作成
となってしまいます。
同じ内容なのに3チームにまとめることでペリカンズが大幅に得するということです。不思議ですね。
各チームのフロントオフィスはこのような複雑な計算を常に行い、最善を尽くすことを目指しています。
このトレードはそんなフロントオフィスの凄さが分かる良い例だったのではないでしょうか。