ペリカンズが優勝したら結婚するブログリターンズ

NBA、特にニューオリンズ・ペリカンズについてメインに書いています。

【和訳】間違いばかりの状況を立て直す Part1:チームがなかなか手放せないとき

引用元:

www.bourbonstreetshots.com

NBAで勝利を収めることは難しい。持続した勝利ないしは優勝への確実な道のりというものはないが、その道のりには課題をさらに困難にさせる多くの落とし穴がある。

このシリーズでは、再建期間中のチームによって為された共通の過ちを検証していく。NBAの歴史には失敗した再建が幾つもあるため、過ちの例を広く探しにいく必要はない。

重要なのは、終わることの無い苦悩に陥っている常敗チームだけを見るのではなくて、困難は乗り越えたものの、その途中で失敗をして頭打ちになってしまったチームにも目を向けるということだ。

これは3部作の構成で、最終回はトレードデッドラインの週に公開する予定だ。

(もうとっくのとうに終わってますね…)

チームがなかなか手放せないとき

ケース対象:デンバー・ナゲッツ、サクラメント・キングス、ニューオーリンズ・ホーン=ペリカンズ、そしてある時点での基本的にほぼ全てのチーム


私が目にしてきた中で最も大きな過ちの1つは、チーム状況が低迷している中で、良い才能はあるが優秀な才能を持ち合わせない選手を保持するために、必要以上に高い金額を支払ってしまうことだ。
このような状況に陥るのは低迷しているチームに限ったことではない。

ただ、優勝争いをし続けるために重要なロールプレイヤーに必要以上の金額を払わされる良いチームや優勝候補のチームと比較して、悪いチームははるかに危険な状況にある。
こういった決断の影響はすぐに現れることは少なく、数年後に現れることが多い。

それでは、デンバー・ナゲッツの過去に遡って、過去の判断ミスがどのようにして将来を苦しめることになったか見ていこう。

 

2014年の10月、オフシーズンの終盤でルーキー契約延長の締め切りが迫っていた。ロスター上には24歳の若きケネス・ファリードがいた。
ファリードは1試合平均で13.7点、8.6リバウンドを記録し、さらにスペインで行われたワールドカップでは、アメリカ代表として成功を収めて金メダリストとなった。

アンドレ・イグダラがチームを去って、ダニーロ・ガリナリがACL(前十字靭帯)の断裂によってシーズンを棒に振った後、ナゲッツはシーズン成績で36勝46敗を記録した。

チーム成績は向上するだろうと楽観的だったナゲッツは、ルーキー契約が終了する前にケネス・ファリードと4年50Mの延長契約を結ぶと決定した。

ナゲッツの上層部の考えは分からないが、常識的に考えると成長している若手選手を長期間に渡って保持したかったと考えていたはずだ。

それはなぜか?NBAにおいて、才能のある選手を獲得するのは難しく、とりわけプレミアではないマーケットであればなおさらだ。
才能のある選手を手放す、ないしは諦めることは確実に勝利の方程式から外れるだろう。

それにもかかわらず、ナゲッツはシーズンを30勝52敗で終え、シーズン半ばにヘッドコーチのブライアン・ショーを解雇した。
翌オフシーズン、ナゲッツはマイク・マローンをヘッドコーチとして雇い、その後の2シーズンでは33勝49敗、40勝42敗になった。

2016-17シーズンの終わり、ナゲッツは3年前と似たような状況下にあった。
ナゲッツはゲイリー・ハリスという才能ある若手選手との契約を延長することに関心を向けていた、上昇気流に乗ったチームだった。

案の定、2017年の夏にナゲッツはゲイリー・ハリスと4年84Mの延長契約を結んだ。
留意すべき点は、ナゲッツはちょうど1年前の2016年にジャマール・マレー(7位)、フアン・エルナンゴメス(15位)、そしてマリク・ビーズリー(19位)をドラフト指名したばかりであったということだ。

 

またしても、ナゲッツは現状で良いチームではないのに市場価値に割増した金額で良い選手ではあるが優秀ではない選手を引き留めようとして、リスクの高い賭けを行ってしまった。

しかし、最終的にナゲッツは良い結果を残した。その次のシーズンは46勝36敗で群雄割拠のウェスタンカンファレンスのプレイオフをぎりぎりで逃し、2018-19シーズンには54勝28敗でウエスタンカンファレンスで2位となった。

二コラ・ヨキッチと、ヨキッチほどではないがジャマール・マレーが成功した。ところで、ファリードとハリスの延長契約は役に立ったのだろうか?これらの決定によるドミノ効果を見てみよう。

https://lh6.googleusercontent.com/Ae5NJOBbd6gHv9HGNDLkZ8JkWUCTsCFFzo1fM_ovvU1eKP4FSYM1Lnyo-umw1ksycO35TZ2-ybs1CwqN_b7rEU4YQfE-RVBq88L-B6HXUl9UFWcYzPRZlUaJwR9ocbipV-qW5Ftr

ハリスとの延長契約から1年も経たずして、ナゲッツはラグジュアリータックスの点で自分たちが不利な状況にあることを理解した。(完全に自業自得による状況なのだけれど)

オーナーはプレイオフに出ていないチームに対してはタックスを払いたくなく、経営陣にサラリーを削減するように指示した。
ナゲッツは、その時点でほとんどローテーションに入ってなかったケネス・ファリードのサラリーをダンプするために1巡目、2巡目指名権を抱き合わせなければならなかった。

ファリードほどではないが、ナゲッツは30勝52敗に終わった2015年の7月に再契約を結んだウィルソン・チャンドラー(彼もまた良い選手だが優秀ではない選手)を動かすために、2巡目指名権と2巡目のスワップ権も抱き合わせる必要があった。

 

 以前に犯したまずい判断を精算するためにナゲッツが指名権を付けざるを得なくなった出来事から1年弱ほど前に、ゲイリー・ハリスの延長契約は締結した。

その後、ナゲッツが84Mのハリスに何が起こっているのか理解しようとしている数年間の間、1巡目の有望株であったマリク・ビーズリーは基本的にずっとベンチメンバーであった。

ビーズリーに代えてハリスをベンチ出場にすることはロッカールームでは受け入れられなかったし、仮にそうしてしまっていたら、大金を支払った選手を見限ったとしてトレード価値はほぼ完全に失われただろう。

3年後、ナゲッツはビーズリー(とエルナンゴメス)の制限付きFAを目前にして、再契約を結ぶ余裕がないと判断し、2020年の22位指名権とサラリーフィラー*1とのトレードで彼らを放出した。

 

純粋に価値の観点で見ると、ナゲッツは15位と19位指名選手を22位指名権(ジーク・ナジ)とトレードしたことになる。
選手の観点から言うと、ナゲッツはビーズリーに出場時間を与えることも(ゲイリー・ハリスが出場時間を貰っていた)、お金もなかった(ゲイリー・ハ以下略)ので、ゲイリー・ハリスより優れたマリク・ビーズリーをトレードしたことになる。

ハリスはルーキーイヤー以来の最低なシーズンを過ごし、来季は20M以上を支払われる一方、ハリスの契約よりも絶対値平均が安いビーズリーは今のところ1試合平均で20.5点をあげている*2(クスリ所持したりライフルを家族に向けたりしてるけどね…)

これは表面上の影響に過ぎない。
ハリスの契約がデンバーの首をどれだけ絞めることになっただろうか?
ドリュー・ホリデーとのトレード交渉において、彼の契約が障害となったことを示唆する情報が多くある。

全ての観点から見て、ファリードとハリスの契約でナゲッツが失ったものは大きかった。

デンバーだけではない

実際にはほぼ全てのチームがどこかの時点でこの過ちを犯している。
チームが低迷している中、優秀ではないが良い選手を保持することに多額のお金をかけることの危険性を説明するために、近年からさらに2つの例を用意した。

サクラメント・キングスを見てみよう。キングスは再建で悪手を打った良いお手本となるだろう。

2018-19シーズン、キングスは39勝43敗でシーズンを終え、ここ12年間で最も良い記録を残した。
そのシーズンの流れに乗って、キングスは優秀ではないが良い選手であるハリソン・バーンズと4年85Mで再契約を結んだ。
気分を良くしたキングスはバディ・ヒールド(彼もまた優秀ではないが良い選手)と4年94Mとハイリスクな延長契約を結んだ。

 

言い換えれば、キングスは39勝43敗したチームを維持するために1億7900万ドルを投資したということになる。

ナゲッツとマリク・ビーズリーと同様に、数年後のディアロン・フォックスの制限付きFAが控えていることにに加えて、保留中のボグダン・ボグダノビッチと契約更新をする期日が迫っていることをキングスは知っていた。
そして、キングスは結局無償でボグダノビッチを失った。

ボグダノビッチは最近延長契約を結んだヒールドの陰に隠れる役割に対してすでに不満を持っていて、キングスはアトランタから提示されたオファーシートにマッチすることで、問題をさらに複雑にさせたくなかった。
キングスはバディのトレード市場で価値を測ろうとしたが、無意味だった。

そして、キングスはバディと出場時間争いをするタイリース・ハリバートンもドラフト指名した。
3月、キングスはシャーロット・ホーネッツ戦での惨敗直後に13勝21敗となった。このチームを維持する意味はあるのだろうか?

キングスと同様に、ペリカンズもチームが低迷しているときに、良い選手だが優秀ではない選手を引き留めるために過剰な支払いをしたことはファンもよく覚えているはずだ。

2012年の夏、当時のニューオリンズ・ホーネッツは、アンソニー・デイビスのためのチームを作るという決断を下した。
21勝45敗の当時のホーネッツは、エリック・ゴードンのフェニックスからのマックス契約のオファーシートにマッチしたのだ。

ニューオリンズのファンにとっての過去のトラウマを掘り起こすつもりはないが、ゴードンとの契約は、ほぼすべての段階でチームを補強する障害となっていた。
ゴードンが在籍していた間、ペリカンズがプレーオフに進出したのは1度だけ。

デイビスのルーキー契約期間中にゴードンのMAXサラリーが計上されていなかったら、ホーン・ペルズの状況はどれほど変わっていただろうか?想像するしかない。

 

学んだ教訓

ここには、組織の将来を妨害するようなやり方を組織に行わせる、多くの認知バイアスや行動経済学の原理が存在している。

チームが持っていない選手とは対照的に、すでに保有している選手のことを過大評価してしまう授かり効果に対する、サンクコスト(過去に投資して回収できない費用のこと。*3)を受け入れられないことによって、チームは何度もこれらの罠に陥ってしまう。

価値判断の誤りは、ほぼ全ての誤った判断の原因であり、この研究ではチームが脆弱なロスター構成に対して倍賭けを行ってしまうという、非常に特殊な過ちを検討している。

これは優勝候補チームの要となる選手(ミルウォーキーのマルコム・ブログごほごほ、オクラホマシティー・サンダーのジェームズ・ハーごほごほ)にお金を出すことと、勝率5割より数試合下に位置するチームにお金を出すことは全く意味が違う。

組織は低迷するチームにいるスター級ではない選手の重要性を過大評価する傾向にあり、2回目の契約の間に自然と改善が起こるだろうと、しばしば自分たちを騙して信じ込ませるのだ。

アスレチックのセス・パートナウはこう書き記している。

これは、チームが優先順位の高い選択肢である選手が成長して失うことになった時、そういった選手が多額のルーキー延長契約ないしは2度目の契約を獲得することへの影響を持つようになる。いきなり、チームがウィングのディフェンスを厚くする必要が出てきた時に、キャップのお金を全て使い果たした!ということになるんだ。


セスは各チームは「バケット・ゲッター(得点を取る選手)」にもっとお金を費やすべきだという文脈においてこの議論を起こしていたが、論理的には同じことが言える。

低迷するチームの優秀ではないが良い選手を維持するためにお金をかけることは、チームが最終的に好転した時に、不釣り合いで高額なものになってしまう。

では、どうすれば(優秀ではないが)良い選手を保持することなしにチームが好転するのだろうか?これは、各NBAチームが自前の選手を保持するために長期的な資金をつぎ込む前に必ず直面する問題である。しかし、これは本当の意味で問題ではない。

確かに、勝利に関してチームごとに優先順位が違うことは理解しているし、オーナーが原因となっていることもある。
しかし、ドラフト、トレード、FAという、才能ある選手を加えるには3つの方法がある。

ドラフトとFAは多くの運が付きものだが、3年ごとにロスターの70%以上が入れ替わるリーグにおいて、トレードは機会を伺うチームには活用可能なものであろう。

毎年、売りにでたい、買いにでたい、はたまた単純に刷新を図りたいチームが出てくる。
私のドラフト研究では、実際のところ選手のトレード価値はルーキースケールの2年目以降に最高点に達する可能性があると示唆している。
もしチームが優秀な選手を獲得したい場合には、若くして才能ある選手が制限付きFAになる前に、より活発的に彼らをトレードすることは、そのための1つの方法だ。

 

この取り組みによって、ある時点で飛躍する自前の才能のある選手を失う機会を与えてしまうのではないだろうか?

もちろんその通りだ。
成長というものは直線的なものではないし、優秀ではないが良い選手が優秀な選手に成長することだって大いにあり得る。しかし、重大な決定を下す組織は、この決断を下すようにさせるバイアスを認識する必要がある。

歴史を振り返った時に、選手を常に動かした(トレードした)場合と、選手を保持し続けた場合とでは、どちらが優位に立つのかということも賭けてみたい。
たいていの場合、飛躍が起きることは無く、向上は段階的なものにすぎない。

そういった選手に割り当てたリソースによって、チームが他のより優れた選手を加えることを積極的に妨げている場合、チームを組み立てる際に長期間不利な影響を与える可能性がある。

これは、バスケットボールで言うところの、ボールが返ってこないことを恐れた選手がパスを出して、より良いシュートが決まると信じることよりも、ひどいシュートを放ってしまうことに等しい。

適用された教訓

ペリカンズはロンゾ・ボールとジョシュ・ハートを制限付きFAとして保持したままトレードデッドラインを迎えることになる。
記事を書いている時点で、ペリカンズは15勝19敗を記録していて、決して良いチームだとは言えない。

ブランドン・イングラムはMAX契約(5年158M)を結んでおり、スティーブン・アダムスは2年35Mの延長契約を受け取っており、そして来年、エリック・ブレッドソーは18.1Mを支払われることになっている。

このチームのサラリーはボールとハートの再契約抜きで、すでに高額となっている。
ペリカンズは、この明らかに良くないチームにボールとハートを引き留める価値があるのかということを自問自答しなければならない段階に来ている。

15勝19敗のチームとって、現在の年間コストの2~3倍になってもボールとハートのスキルを引き留める必要があるほど彼らは重要な存在なのだろうか?

個人的には、両選手へのオファーを積極的にさばいていくと思う。サイン&トレードの可能性はあるが、価値を得る最大のチャンスは3週間後の3/25のトレードデッドラインに起きることになる。
ボールよりもハートのほうが制限付きFAで事を少しばかり進展させやすい状況にあるかもしれない。

彼のクオリファイング・オファー(以下QO)は、ボールの14.3Mに対してたったの5.2Mであり、彼のキャップホールドはボールの28.7Mの1/3程度だ。

制限付きFAでハートが有利なオファーを受けることがなく、ペリカンズが非常に少ない費用で残すことができる可能性は大いにあるが、ボールに同じ博打をしてもよいのだろうか?

ボールの多額のQOとキャップホールドの間には、彼を制限付きFAに至らせることによって、それによる機会費用*4がすでに発生している。

ザイオンのルーキー契約の残り期間とそれ以降にかけて、ボールの契約が1年あたり18~22Mでチームサラリーに計上された時に何が起きるだろうか?

残りのザイオンのルーキー契約期間で、ペリカンズはすでにキャップを超えるチームになることがほぼ確定していて、チームサラリーはさらに高額に膨らんでいくことになる。

だからこそもう一度聞くが、悪いチームを維持することにどれほどの価値があるのだろうか?ボールとの再契約が将来的にどれほどのしかかってくるだろうか?の少ない良いプレーが、デッドラインで前述した見込みある資産(指名権や若手)や将来の選択性を保証してくれるのだろうか?

これらの質問は、今日では答えることが不可能かもしれないが、ペリカンズの上層部が問いかける必要がある質問である。
ザイオンの何とも急速な成長によって、ペリカンズがいつの日か良いチームになるだろうが、ボールにもかかわらず(おそらくボールと再契約することにもかかわらず)、結局はそういうようになるのだろうか?という小さな疑問がある。

今後数か月間で、ペリカンズが外部から多くの才能ある選手をチームに入れる予定が無い限り、ボールに多くを注ぎ込むことが将来の柔軟性に作用するか心配している。

迷ったなら、ゲイリー・ハリスと同じ轍を踏むのはやめておこう。


今回も、とまブラさん(https://twitter.com/nolimitlaltb31?s=20)とのコラボです。
とまブラさんが翻訳、管理者が少し手直しという分担でした。

管理者が普段から参考にしているShamit Duaさんの記事でした。
チーム作りの難しさが分かりやすくまとめられていると思います。

グッドプレイヤーに大金を払うのは危険ですが、良い選手を残さないという決断は簡単ではないところが難しいですね。

こういう視点をもってNBAを見るとより面白いのではないでしょうか。
お読みいただきありがとうございました。

*1:サラリー合わせに使われる選手

*2:今季は最終的に19.6点になった。

*3:ここでは選手の育成のために時間やお金をかけてきたことによって、その費用を回収せずに手放すことに対して心理的な制約がかかることを指していると思います

*4:ある選択肢を選んだ際(ここでは制限付きFAにすること)に、それ以外の選択肢を行使した場合に得ることができた利益のこと