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【和訳】ペリカンズのオフシーズン:ザイオンを中心にコンテンダーチームへ

引用元:

www.espn.com

2020−21シーズンのペリカンズが失望的だったということは否定できないだろう。

 

ザイオンが初のオールスターに選出され、ロンゾのプレーが改善されたのにも関わらずペリカンズは3年連続でドラフトロッタリーへ向かうこととなった。

 

シーズン前のESPNの予想では、39勝でウエスタン6位だった。ところが蓋を開けてみればペリカンズは勝率5割を下回り、プレーイントーナメントにすら参加することができなかった。

 

シーズン終盤のザイオンの怪我によりプレーイン出場の希望が絶たれたという形ではあるが、シーズン開始から5ヶ月間の一貫性のなさが原因だったといえるだろう。4勝3敗スタートの後、1度も勝率5割を超えることができなかった。

 

ザイオンが2年連続でプレーオフに出られなかった今、オフシーズンの焦点は制限付きFAのロンゾ、ハート、リーグ最大である5つの指名権に。

フランチャイズスーパースターを中心にチームを構築していくだろう。

 

◯ザイオンのためのチーム作り

 

現ペリカンズの球団社長のデビッド・グリフィンは、キャバリアーズ時代にレブロンを中心にロスターを構築することについて、2017年1月にThe Verticalに以下のようなユニークなコメントを残していた。

 

要するに、我々はベイブ・ルースのレガシーに片足を突っ込んだようなものさ。我々はそのレガシーを広げ膨らませる責任がある。まるで神の啓示を受けたように思えたよ。レブロンはそれほど素晴らしく、彼一人の力でタイトルコンテンダーにならなければならないと感じるほどだった…万が一彼の時間を無駄にするようなことがあれば、それは恥だ。

 

 

そしてその4年後、グリフィンは再びザイオンという不世出のスーパースターを中心にタイトルコンテンダーとなるためのチーム作りを任された。
ザイオンはチームにとって得な4年のルーキースケール契約の途中であり、歴史上ルーキースケールのマックス契約延長を断った選手はいない。

ザイオンは2022年のオフシーズンにルーキー契約延長の資格を得る(解説:ルーキースケールの契約延長は、4年目のモラトリアム明けからレギュラーシーズンが始まる前日までの間のみ結ぶことができる。これを逃すとFAになるまで契約できない)。

 

ペリカンズは、フランチャイズプレイヤーを維持するための時計は、ルーキースケールの次の契約(ザイオンの場合は2023−24シーズンから)が始まった時からではなく、ドラフトされた時から始まることをアンソニー・デイビスとの時間で学んだ。
ADの時も、2年間プレーオフに出場することができなかった。

 

ロスターをザイオンのためにどれだけ最適化できるかという段階まで進んではいるが、今シーズンと同じような成績を残しているような余裕はない。

 

グリフィンとペリカンズはザイオンがフランチャイズとニューオリンズにとってどれだけ大切かということを十分に認識している。
ザイオンが指の骨折でシーズン終了となった時の以下のグリフィンのコメントからそれが見て取れる。

審判がちゃんとファールコールをしていれば避けられた怪我だったから、非常に腹が立っている。我々はファールコールを受けなかった証拠の映像を送ったり、オフィシャル部門の方々、リーグ運営部門の全員と話をしたりとあらゆる方法を用いて、ザイオンが怪我させられているということを伝えたんだ。言葉を選ばず言えば、ペイントエリアが無法地帯と化していたからザイオンは怪我をしたんだ。

 

 

◯制限付きFAのロンゾとハート

 

2020年12月に、ロンゾとハートと契約延長を結ばなかったのは残す気がなかったからというわけではなく、単にルーキースケール契約の契約延長交渉はチーム、選手(または代理人)双方にとって難しかったからだ。

 

FAの期間とは異なり、キャップスペースのあるチームとの競争や他チームからのオファーシートを待つということはなく、あくまでレギュラーシーズン開幕前日の午後6時までにペリカンズと契約延長を結ぶかどうかでしかなかった。

 

今度は制限付きFAなので他チームからのオファーにマッチできるが、12月とは状況が変わっている。2人の進退について、考慮事項をまとめてみた。

 

①ペリカンズがロンゾとハートに積極的な残留のアプローチを行う場合、お金の動きはどうなるか

 

ブレッドソーの18.1Mのサラリー、アダムスの17Mの延長契約、ロッタリーピックを含めてもペリカンズのチームサラリーはタックスラインを約40M下回っている。

 

ロンゾとハートに積極的なアプローチを行うと、ロンゾの契約は19Mから始まる4年85M、ハートは4年50M(12.5M×4)程度になると仮定しよう。この時ロスターの空きは2人だ。
ロンゾの初年度19Mというのはヴァンブリートの21.2Mより少し安いが、総額は同じ85M。

 

ちなみに初年度が19スタメンPGの中で18位、スタメンSGの中では12位となる。

 

このシナリオだと、約9.5MのフルMLE(解説:ハードキャップに達しない場合に使用することができる)を使用し、

1.6Mでミニマム契約(解説:ミニマム契約は4年目以上の選手と結ぶ場合、一律で約1.6M)を結ぶと仮定すると、

タックスラインに突入してしまい、そのままだと1.5M程度のタックスを払うことになるが、これはレギュラーシーズン最終日に下回っていれば回避することができる。

 

ちなみにペリカンズはフランチャイズの歴史で一度もタックスを払ったことがない。

 

ブレッドソーの18Mのサラリーをトレードで丸々ダンプしたとしても、ロンゾ、ハート、フルMLE、BAE(解説:フルMLEと同じ状況で、2シーズンに1回のみ使用できる例外条項)以外で契約ができるキャップスペースが生まれるわけではないということは注意が必要だ。

ブレッドソーをトレードし、ロンゾとハートを見返りなしで放出することでようやくキャップスペースが生まれるのである。

 

 ②市場が契約内容に与える影響はどのようなものか

 

今オフはサラリーキャップが急上昇し、28チームにキャップスペースがあった2016年のオフとは状況が違う。

 

来シーズンのサラリーキャップは推定で112Mで、今シーズンの109Mから3M程度しか上がらない可能性が高い。

20M以上のキャップスペースを持つ可能性が十分にあるのはホーネッツ、ヒート、ニックス、サンダー、スパーズの6チームだ。

 

ラプターズがラウリーと再契約し、

サンダーが巨額のトレードエクセプション(TE)を保持し(解説:TEはその額の分チームサラリーに計上されるので、キャップスペースを使うにはTEを捨てる必要がある) 、サラリーキャップを超えているように”振る舞った”場合、

キャップスペースがあるチームは4チームまで減る。

ホーネッツ(ラメロ、ロジアー、グラハム)やスパーズ(マレー、ホワイト)はロンゾとハートと同ポジションの選手が多く、

実質的にオファーを出す可能性のあるチームはヒートとニックスだろう。

 

チームサラリーに余裕があるチームが少ないにも関わらず、ペリカンズ以外に2人にオファーを出す可能性が十分にあるチームがあるということだ。

 

ロンゾは今シーズン、ポイントガードからオフボール主体へとスタイルを変更した。

これにより、平均得点(14.0)、フィールドゴール成功率(41.9%)、3ポイント成功率(37.5%)でキャリアハイの数字を記録した。

また、ブレッドソーと一緒にプレーをし、ザイオンがポイントガードでプレーした時間が多かったにも関わらず7アシスト以上の試合が16試合あった。またブレイザーズ戦ではシーズンハイの17アシストを記録した。

リアルプラスマイナスはNBA10位である。

 

ハートはレイカーズにドラフトされて26歳となる現在、既に”究極のグルーガイ”として評価されている。

ハートはセンター以外すべてのポジションでのプレー歴があり、スターター(65試合)からでもシックスマン(177試合)からでもプレーすることができる。

 

4月初旬に親指の怪我でシーズン終了となったハートは、スモールフォワードの中で平均リバウンド数でリーグ1位となった(平均8.0リバウンド)。

 

最低でも約9.5MのフルMLE、おそらくは12〜13M程度のオファーとなるだろう。

 

ProfitX(人工知能を用いたパフォーマンス、財務予想ツール)によると、2021−22シーズンのサラリーは最高11.8Mから始まると予測されている。

 

③交渉が膠着した場合はどうなるか

 

交渉が膠着し、キャップスペースがあるチームがなくなり、サイン&トレードもまとまらなかった場合、最終手段として1年14.4Mのクオリファイイングオファー(QO)にサインするという方法がある。

これにサインした場合、2022年に無制限FAとなる(解説:QOは基本的に制限付きFAの選手が元チームを離れるための手段として使用される)。

 

前述の通り、キャップスペースがあるチームは僅かであるため、ペリカンズとロンゾが別れる場合はサイン&トレードとなる可能性が高いだろう。

 

サイン&トレードであれば、ペリカンズは何らかの見返り(選手や指名権など)を得ることができ、ロンゾの選択肢も増える。

 

ヒートやニックスは、キャップスペースでロンゾにオファーを出すことができるが、サイン&トレードであればペリカンズがマッチ(制限付きFAを強制的に残留させること)をしないということを確定させることができる。

これはペイサーズがバックスからブログドンを獲得したときがそうだった。

 

もちろん、ヒートやニックスはサイン&トレードにせずに普通にオファーを出すことができるが、その場合は、ペリカンズがマッチをするかどうかを選択する48時間の間、オファーの額分チームサラリーが拘束されてしまう。

 

 

◯オフシーズンのチームサラリーの内訳

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 ペリカンズの保証されたチームサラリーは91.2Mだが、ロンゾ、ハート、1巡目指名権の権利を保有することによりチームサラリーがホールドされ、112Mを超えてしまう(解説:再契約をする時や1巡目指名選手と契約をする際などにはサラリーキャップを超えることができるが、その権利を保有している間はキャップスペースをその分使えないようにするために一定額がチームサラリーに仮計上される。これをホールドという。)

ロンゾへのオファーシートにマッチしなくても、サラリーキャップを超えてしまう。

 

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チームのニーズ

・スターターとバックアップのシューティングガード

・ディフェンシブなウィング

・ストレッチ4

 

ロスターを強化するためのリソース

・ドラフト:1巡目1つ、2巡目4つ

・将来のドラフトアセット:レイカーズとバックスからの1巡目指名権計4つ、スワップ権3つ

・例外条項:約9.5MのフルMLEと、約3.7MのBAE

・トレードで使える現金5.8M

 

◯重要な日付

 

・ペリカンズは8月1日までに、ロンゾとハートのQOを出す必要がある。ロンゾは直近2シーズンで平均34回以上スターターで出場したので、14.4MのQOを受ける資格がある。
ハートはスターターの基準を満たすのに407分足りず、受けることのできるQOは5.2Mとなった。
このQOを出すことでペリカンズは他チームからのオファーにマッチすることができるようになる。

・元2巡目指名選手のディディ・ロウザダは1.5Mのチームオプションの期限を8月1日に設定している。オプションが行使されても、サラリーは無保証のままとなる。

・ウェ二エン・ゲイブリエルは1.8Mの契約が無保証。2022年1月7日までロスターに登録されていると完全に保証される。

 

◯制限事項

 

・イングラムには15%のトレードボーナスがある。

・ロウザダは、チームオプションが行使されるまでトレードできない。またロウザダとゲイブリエルの契約は保証されていないため、トレードの際のペリカンズ側のサラリー計算では0Mとして扱う。

 

◯契約延長候補者

 

・該当選手なし

 

◯ドラフト

 

ペリカンズはサンダー、ロケッツについでリーグで3番目に多くの指名権を持っている。

 

ペリカンズは向こう7シーズンの自前1巡目指名権に加えて、レイカーズとバックスからそれぞれ2つずつの1巡目指名権と、レイカーズから2023年の、バックスから2024年と2026年のスワップ権を保有している。

 

ペリカンズがブレッドソーのサラリーをダンプする場合、トレードで1巡目指名権を付ける可能性が高いが、レイカーズとバックスからのノンプロテクトの1巡目指名権にプロテクトを追加できる。
例えば、2025年のバックスからの1巡目指名権にトップ10プロテクトを付与し、サンダーにトレードすることができる。
バックスが10位内に入ればペリカンズはそれをキープし、他のドラフトアセットを送るということだ。

 

またペリカンズは、2021年のドラフトにおいて最も多くの指名権を持っているチームである(1巡目1つ、2巡目4つ)。

 

ESPNのジョナサン・ギヴォニーとマイク・シュミッツの予想では、ペリカンズの指名選手は以下のようになっている。

 

・10位(自前):Scottie Barnes, SF/PF, フロリダ州立大

・36位(キャバリアーズ):Miles McBride, PG, ウェストバージニア大

・40位(ウィザーズ):Austin Reaves, PG/SG, オクラホマ大

・41位(自前):Rokas Jokubatis, PG, リトアニア

・51位(マーベリックス):David Johnson, PG, ルイビル大

 

しかし、ペリカンズは過去2シーズンでニキール・アレクサンダー・ウォーカー、カイラ・ルイスJrを指名したので、2巡目で4人のガードを指名する可能性は低い。
2巡目指名権をいくつか組み合わせてトレードアップするか、将来の指名権とトレードする可能性が高いだろう。

 

2019年に就任して以来、グリフィンは既に6度のドラフトに関連するトレードを行っている。
特筆すべきは2019年で、ADのトレードでレイカーズから得た4位指名権をホークスにトレードし、8位(ジャクソン・ヘイズ)、17位(ニキール・アレクサンダー・ウォーカー)、35位(ディディ・ロウザダ)を獲得した。

 

2020年には、ペリカンズは39位と42位をトレードし、将来の2巡目指名権を2つ手に入れた。
7月には4つの2巡目で再び同じようなトレードを行うだろう。

 

 

感想

とても疲れました。
ボビー・マークスは僕がいつもCBA関係でお世話になっている優秀な記者で、この記事も分かりやすく…と思いきや専門用語を知ってる体でサラッと入れてくるので、解説を差し込みながら書きました。CBAに多少詳しい僕ならではのやり方ですね。

こうして訳して通しで読んでみても要点が分かりやすくまとめられていますね。さすが師匠。

全チーム解説付きでやったら需要ありそうだけど、そこまでする体力はないかな…